おかあさんを紹介します。

おかあさんです
おかあさんです

FBにはさりげなく、犬のさんぽ、と書いていますが、実は去る7月6日に、彼女はうちのこになりました。名前はおかあさんと言います。

私は以前からよく夫に「いぬかわいがりたいなー」と言っていました。でも、飼うのは無理だと思っていました。理由はお客さまがみえる家だし、静かであってほしいお仕事だし、清潔第一だし、何よりこれ以上私の手が回らないし、夫は犬を飼った経験がないし、など。何度となくシミュレーションしてみたのですが。

でも万が一、飼うことができるようであれば、里親を探しているわんちゃんの里親になろう、と思っていました。

6月初め頃、近所の畑とやぶに囲まれた坂道の途中に、3匹の犬が住んでいると夫から聞きました。2匹はまだ子供で1匹は多分母親だと思う、と。

子供たちはひとなつっこくて、車で通ると寄ってくる。でもおかあさんはとても警戒心が強くて後ろでずっと吠えている。

そのうち夫は食べ物をあげるようになりました。飢え死にはしないように、という思いで。私もついていくようになりました。

子供たちはすぐに私たちを覚えて、遠くから走ってきては「会いたかった~」とか「遊ぼうよ~」と犬語で言ってきます。おかあさんだけは痩せていてご飯にもなかなか近づけないので、子供たちがほとんど食べてしまいます。

しばらくすると、私たちの他にも何人かご飯をあげている人がいるのがわかりました。安心もしましたが、こんな状態がいつまでも続くわけではない、と心配もありました。

私たちは、なるだけ、おかあさんに食べ物をあげようと試みました。しばらくすると子供たちはどんどん自立していき、昼間はどこかへ出かけるようになりました。おかあさんだけはやぶの一角の隠れ家から離れることもできません。

車が通るたびに慌てて隠れてはまた少し出てきます。でもおかあさんに食べさせたい私たちのことがわかるのか、徐々に近づいてこられるようになりました。

私たちが帰ろうとして坂を歩いていると、後ろからついてきて、二人のくつに交互に鼻先でつんつんします。けれど坂のあるところまで来るとそれ以上は絶対に降りてきません。

数日のうちにおかあさんは私たちのそばでごはんを食べました。それからおもむろにひっくり返っておなかを見せました。それから、私たちがさんぽに誘うとついてきて元気に走って見せました。その全力疾走は本当に美しくてすてきでした。

それから、子供のうちのやんちゃな女の子のほうがいなくなりました。そしてなんと、うちの並びのお隣さんが引き取ったとわかりました。すごい、と思いました。Wさんは「白いの一匹飼いませんか」と私に言いました。白いのはもう1匹の子供です。私が「おかあさんが心配で」と話すと「おかあさんは呼んでも坂を降りてきませんよ」と言われました。そうなのです。

絶対に犬を飼うことはない、と以前から断言していた夫は、少しずつ心を変えて、そして心の準備をしていたようでした。

ある日、私が一人でおかあさんに会いに行くと、近くの畑のご夫婦が通りかかりました。犬のことを私に聞かれ、保健所に電話しようと思っていると話されました。それから帰り際に荷物から野球のバットを取り出して私に振り上げて見せました。犬対策、ということみたいでした。

私は思わず「来週引き取りますから、電話しないで待っててください」と言いました。週末は以前から渡名喜島へ旅行に行くことが決まっていたのでどうしてもそれ以降になってしまうのです。

出来事を夫に話すと夫はとうに心を決めていたようで「じゃあ、首輪とリードを買っておこう、帰ってきたらおかあさん確保だ」と言いました。

渡名喜は2泊の予定だったのですが、おかあさんが気がかりでした。しかし結局は台風が近づいていて、船が出なくなるため1泊で早々に戻りました。戻る道すがら、おかあさんはいました。

まずは保健所などに連れていかれず、生きていてくれたことにほっとし、そのまま私は車を降りて、おやつのカステラを握りしめて、おかあさんをうちまで誘導することにしました。

うちまでは長い坂を3つ下らなくてはなりません。

一つ目の坂の下からしゃがんで手を広げるとおかあさんは全力で走ってきます。そこまではこれまでも来られた場所です。次の坂からは警戒してなかなか進みません。さらに車が通るたびに、また基地まで戻ってしまいます。何度も行ったり来たりしながらすこしずつ距離を伸ばしました。カステラをちょびっとずつご褒美にあげながら。

さいごの坂の途中で建築中のおうちがあり、その手前でまったく進まなくなってしまいました。作業の人がいるのをとても怖がっています。坂を通らずにうちにたどり着く方法もあります。石段を降り、草ぼうぼうの馬車道を通るとうちです。ハブが怖いので絶対に足を踏み入れない場所です。

しかし石段を降りればそこには先に引き取られたおかあさんの子供もいるのです。おかあさんは安心するかもしれません。とにかく石段下へ誘導することにしました。

降り始めると子供のクマちゃんはおかあさんの気配をすぐに察知しました。おかあさんも気づいて親子再会が果たされ、そこにもう1匹のシロちゃんもどこからか駆けつけました。あと一息です。

最後はどうしてもあの草ぼうぼうの馬車道を行くしかありません。家には夫がいて、おかあさんを呼んでいます。私はとうとう、草ぼうぼうの脇のフェンスの金網に足をかけ、フェンスづたいに移動しました。おかあさん、ついてきてくれ、と願いながら。しかしおかあさんは私を見ているだけ。ダメか、と思ったその時、おかあさんはさっそうと草ぼうぼうのトンネルを駆け抜けて私のところへ来ました。

おかあさん!と思わず感動しながら「ここだよ、ここがおうちだよ」とおかあさんに紹介するとおかあさんはとても落ち着いた様子でガレージを見まわし、その隅に静かに座りました。ここがおうちだとわかった、というふうにしか見えませんでした。

それから夫が、首輪を持ってきて、そっと差出し、においをかがせ、それから「おかあさん、これつけさせてくれ」と言うと、おかあさんは信じられないほど静かに受け入れ、できたと同時にお座りをしました。まるで象徴的な儀式のようにみごとでした。

シロはしばらく、うちとWさんのおうちのあたりをウロウロし、雨が降ればうちのガレージにいて、おかあさんのおさんぽにも必ずついてきました。彼女の身の振り方にもしばらく悩んでいましたが、なんとWさんのさらにお隣のKさんが引き取ってくれることになりました。こうして親子3匹は3軒のお隣さんにそれぞれ引き取られました。おさんぽでそれぞれが各おうちを訪問できるような奇跡の里親スタイルが確立されたのです。

おかあさんは想像をはるかに超えておりこうさんでした。私の心配はことごとくクリアされました。シャンプーも恐る恐るさせてくれ、マテもお座りも覚え、トイレ事情はなぜか完璧にコントロールでき(しかも自主的に。)車の乗り降りも自分でできるようになり、車の中ではぴたっと私の足にくっついてフセをし騒がず、仲良し、というとひっくり返ってなでやーをおねだりします。

無駄吠えもほとんどしないのですが、ときどき物音を怖がって吠えることがあります。お客さまは「仲良し」だからヤサシクね、と言い聞かせているのできっとできるようになると思いますが、たまーにお客さまに吠えることがあります。犬と仲良しに慣れている方には即座にひっくりかえってみせることもあります。

RUACHに来てくださるみなさま、こんなおかあさんですがどうぞよろしくお願いします。おかあさんが吠えても、本当に怒っていることはまずありません。敏感さから少しこわがりですが、性格はまっすぐで賢く、甘えん坊で、しかし毅然とした犬です。


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